Narration: 江戸時代、裕福な者にとっては、妻と愛人とを一緒に持つことはよく在ることでした。妻は普通、その愛人のことは認識していました。この物語はお金持ちと彼の妻、その愛人とのお話です。とある風の在る夜、男は家に帰りました。
Wife: あなた、空気が乾燥しているし、とても風が強い夜ですよ。火事が起きないか私は心配です。
Man: そうだね。もし火が上がったら、我が家には消火することのできる者がたくさんいるよ。
W: 私たちの家のことを心配しているのではありません。私はあなたの愛人、ハツさんのことを考えていたのですよ。彼女の部屋に暮らすのは彼女と彼女の召使さんのみです。彼女は火事を気にしているに違いありません。ですから今夜は、彼女の部屋に居てあげてください。
M: うん…おまえがそう言うのなら。(彼の頭の中で)私の妻はほんとうに親切な人だ。私は幸せだ!。
N: 男は幸せな気持ちでハツの部屋に向かった。ゴンスケ、彼の召使、が彼と一緒に向かった。
Gonsuke: 旦那様、今は深夜です。奥様がこんなに暗い中旦那様を歩かせるなど、私には信じることができません。
M: ゴンスケ、提灯を持って私の前を歩くだけでいいのだ。さあ行こう。
N: しばらく後、男とゴンスケはハツの部屋に到着した。男はハツにどうして彼らはここに来たのか話した。ハツは言う…。
Hatsu: ああ、貴方の奥さんはわたしに対して本当にご親切にしてくれるわね。でもわたし、本当は彼女は、貴方と一緒に居たいと思っていると思うわ。もし貴方がわたしと一緒に今夜過ごすのなら、わたしはあまりいい気はしないわ。
M: うーん、分かった。しかし私の妻は君と今夜過ごせと…。
H: わたし、彼女は優しい人ってだけだと思うわ。わたし大丈夫だから、貴方の奥さんのためにおうちに帰った方がいいわよ。来てくれて、ありがと!。
M: そうだね、うん…。君がそう言うのなら。(彼の頭の中で)ああ、ハツはほんとうに親切だ。私の人生には二人の素敵な女性が居て、私は幸せだ!。
G: はは。そしていま、旦那様のご愛人は闇夜の中を歩けと旦那様に!。
M: ゴンスケっ!。
N: そうして、男とゴンスケは彼らの家へ戻った。男は彼の妻にハツが言ったことを話した。妻は驚いた。その時、彼女はこう言う…。
W: ハツはほんとうに可愛らしい女性ですね!。私の心配なんて必要はしないでよろしいのに。私は、もし火が起きて彼女の身に何かが在ったらと考えて悪いわ。あなたは彼女の部屋に戻ってあげた方がいいと思います!。
M: しかしだ…。
W: はやく!。
M: 分かった。ゴンスケ!、提灯を持て!。
G: わっ!。旦那様の奥様は旦那様が本当にお嫌いのようで。
M: なんだとっ?。
G: なんでもありません…。
N: 男とゴンスケはハツの部屋に向かった。しかし再び、ハツは彼の妻の元へ帰れと言う。そうして彼らは彼らの家へ歩き始めた時、男はゴンスケの提灯に火が無いことに気が付く。
M: おい、ゴンスケ。提灯の火が消えているぞ。
G: そうですね…。私は提灯はこれ以上必要ないと思いまして。
M: はあっ?どうして?。
G: なぜなら、私たちは二つの家の間を何度も何度も歩きましたから!。そして今はもう夜明けです!。