村の中に、河のそばにある小さな学校が在った。第三学年だけを除いて、全学年の全生徒が同じ教室で学んでいた。
それは九月一日の美しい朝であった。二人の生徒が彼の事をまず初めて見つけた。その他の生徒が登校しても、彼が誰かを知る者は居なかった。
そのとき一郎、第六学年の、が登校した。一郎が聞く、
「どうしたんだ?」
全生徒が校庭に居た。彼らは彼らの教室に座っている赤い毛をした少年を指差している。一郎は彼に呼びかけた。
「おまえは誰だ?、まだ教室には入れない時間だぞ。」
しかしその少年はなにも言わなかった。彼は大きな、灰色の外套と白いズボンと赤い革の靴を身につけていた。そのとき、少年は生徒達に彼の顔を向けた。
突然に強い風が吹いた。そしてガラス扉が風を受けた。山の木々もが風を受けた。教室の少年は笑っていた。
嘉助は言った。
「彼は風の又三郎に違いない!」
皆もそう思った。その時五郎が叫んだ。
「痛い!」
耕助が五郎の足を踏んで居た。二人の少年は喧嘩を始めた。
一郎は再び教室を見た。赤毛の不思議な少年は風のように去っていた。その瞬間風が再び吹き、ガラス扉を叩いた。嘉助は怒りながら五郎と耕助に言った。
「二人の所為で彼は去ってしまったぞ!」
暫く後、子供達は彼らの教師が到着するのを見た。そして彼らが驚いたことに、不思議な少年は教師の真後ろを歩いている。
皆は教室に入り、教師は言った。
「おはよう。私は皆が夏休みを楽しんだことだろうと思う。今日から、二学期が始まります。それは秋の始まりです。勉学にはとても良い季節です。そして、皆には新しい友達が在ります。高田さんです。彼はお父様の転勤の為、北海道から転校してきました。」
嘉助は教師に尋ねた。
「高田さん、の下の名前は何ですか?」
「彼のフルネームは高田三郎、です。」
嘉助は手を叩いて言った。
「分かっていたよ!、彼は又三郎だ!」
教師が通信簿と生徒の宿題を回収している間、生徒達は彼らの背後に男が立っているのを見つけ、驚いた。彼は大きな、白い背広を着、黒いハンカチーフを彼の首の周りにネクタイのように巻いていた。男は白い扇子で軽く扇ぎながら笑っていた。教師は言った。
「それでは、生徒の皆さん、今日は終わりです。」
そして男の元へ話に行った。
「彼らは直ぐに友達になるでしょう。」
男はお辞儀をして言った。
「有難う御座います。」
そうして、父親と息子は校庭を抜け河を流れの下の方に、家に帰った。風が再び吹いた。