安寿は彼女と彼女の弟が恐ろしい夢を見た後から、様子が変わりました。夢の中では、二人は山椒大夫の所から逃げようと試みたことに対し焼かれましたがしかし、仏像が二人を守りました。
安寿はその夢の後、口数が少なくなりました。まるで彼女は遠い将来を考えているように、彼女の目は遠くを見つめていました。厨子王丸はとても心配しました。しかし、安寿はいつでも言いました。
「何でも無い。心配しないで。」
季節が巡りました。春、安寿が突然に山椒大夫の家来に対しお願いをし、厨子王丸は大変驚きました。
「私の弟と一緒に山へ行き、仕事をさせて頂けませんか?。」
「ああいいだろう、しかし薪取りは男の仕事だ。お前の弟とそれをさせてやる。しかしお前は男の様な短い髪になれ。」
安寿は言いました。
「もちろんです、旦那様。私の髪を切ってください」
刃物の一振りで、安寿のその長く美しい髪は切りおとされました。
その次の日、安寿と厨子王丸は山へ一緒に行きました。安寿は高く高く登りました。厨子王丸は不思議に思いました。
「姉さん、僕らは僕らの仕事場を通り過ぎてしまいました。」
「お前は心配する必要はない、厨子王丸。私に付いて来なさい。」
山の頂きにて、安寿は言いました。
「よく聞きなさい、厨子王丸。私は長い期間計画を考えていました。それで私は口数が少なかったのです。」
そうして、彼女は南を指差しました。
「その下に道が見えますか?。私はその道は大きな街に続くと聞きました。お前が行く時が来ました。お前を助けてくれる誰かを見つけ、私たちの父親と母親を探しなさい。」
「しかし姉さんについては?。」
「私は残ります。この像をお前と一緒に持っていなさい。それはお前を守るでしょう。」
安寿はその像を彼女の弟に手渡しました。厨子王丸は彼女の元を離れたくは有りませんでしたが、彼はこの事は安寿の望みなのだと理解しました。彼女は木から葉をとり、泉の水をそれで掬いました。
「これはお前の未来のためのお祝いです。」
彼らはそれをお互いに飲みました。
厨子王丸は彼女に再び会うことを誓い、彼のできる限りの速さで走り始めました。安寿は彼女の弟を、彼女が彼を見る事が出来なくなるまで見つめていました。
数時間が過ぎ、安寿がどこにも見当たらないので、山椒大夫は大変に怒りました。彼は彼の家来たちに隈なく探すように命じました。静かな池のそばで、とうとう彼らは草履を見つけました。それは安寿のものでした。