エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「Narrow Road to the Far North - Episode 4 - Ryushaku-ji and the Mogami River」(2022 年 3 月)

f:id:forenglish:20210823161633p:plain

 

 曾良と私は山形に居た。立石寺と呼ばれる寺を訪れるよう、地元の人々が我々にすすめた。その寺は平安時代に山中に建立されたものである。我々はそこへ向かう事を決めた。

 

 その山は岩山であり、沢山の大きな古木を有していた。岩は苔に覆われていた。寺院の建物の多くは閉ざされており、辺りに存在する者は無かった。そこは寂寞だった。崖から崖へ、私は注意深く岩の道を歩いた。一つ一つ、各々の仏閣を拝した。我々が高所に登った際、山々、そして谷の景観は驚くほどに美しいものであった。私の心は澄み渡り、爽やかになった。私はそこは静かであると言ったが実際にはそこには多くの蝉の声が夏空の元、存在した。それは彼らの生きる為の時間だった。しかしこの苔生した山寺には強い静寂感が存在した。寂寞は蝉の声よりもより、力強いものだった。それはまるで、静寂なる空気が蝉の歌を取り去っているように感じられた。わたしは俳句を詠んだ。

 

 岩の内部に渡る

 蝉の夏の叫び

 辺りに在る閑さ

 

 山寺への参拝ののち、私は最上川を下る舟に乗りたいと思った。この川は屡々、古い日本の詩歌に現れる。我々は川を下るのに天候の良い日を待つ事を決めた。我々が待つ間、地元の人々が私と話す為に来た。彼らは私に俳句の教授を求めた。彼らは俳句を探っているのだと言う。しかし彼らは、彼らの型は古いものであると理解している。彼らは私から最新の流行の物を学びたいと望んでいた。私は彼らと一緒になり多くの俳句を詠む事を始めた。私はこのような事が起こるとは考えもしなかった。しかし、そのことは私を愉しませた。

 

 さて、最上川の舟下りの話をしよう。その川は奥羽山脈からの水を集め、日本海に入る。私はそこには岩々が存在する危険な難所が在ると聞いていた。舟が転覆する程に川の流れが速い場所も在った。この伝聞は私を不安にさせた。また実際、舟での川下りは大変に恐ろしいものであった。川は板敷山の麓にたどり着いた際、やっと速度を落とした。私は有名な白糸の滝も見る事が出来た。多くの偉大な詩人達はこれら二つの場所についての詩歌を詠んでいる。

 我々は舟を降りた。私の足が地面についた時、わたしは多くの安堵を感じた。思い返してみると、その季節は豪雨の時期であった。私は一番水量が多い時に川を下ったのだ。なんとした冒険だったのだろう!。この俳句が私の心に浮かんだ。

 

 初夏の雨

 力強く流れ下る

 最上川

 

プライバシーポリシー お問い合わせ