Student: どうもこんばんは、予約しているんだが。ああはいそうですか、ごゆっくりお寛ぎください。ご存じのとおり、私は成功した事業を鳥取で営んでいてね、私はかなり金持ちなんだよ。私を鳥取で一番の金持ちのうちの一人にしてくれた取引のためにこの場所へ来たんだよ。鳥取一のお金持ちですか?。
Shisho: やめ!。
St: えっ?。台詞を私間違えましたか?、師匠。
Sh: いや、お前は間違えてはいない。問題はお前の落語が始まる前に、在るんだよ。
St: 落語の前ですか?。私は何も言っておりませんが。
Sh: それが問題なんだよ。落語には「枕」というものが必要なんだ。
St: まくら?。
Sh: それは実際の物語の前の、短い話だよ。観客を温めるようなものだ。もしお前が唐突に落語を始めたら、観客の心の準備ができないだろう。
St: しかし、これは師匠との稽古です。落語を教えてもらうためにその部分を省略してもらえませんか?。
Sh: おまえは馬鹿だな!。枕は落語に於いて、実に大切な部分だよ。
St: 失礼しました。
Sh: さて、もう一度始めなさい。今度は枕からだ。
St: 分かりました。では…。どうも、皆さん。私はお客さんの皆様が次の馬鹿馬鹿しい落語を聞く準備をしてもらえることを願っています。楽しんでくださいね!。ごめんください。予約しているんですが。
Sh: やめろ、やめるんだ!。それは何だ?。
St: まくらです。
Sh: それは枕じゃないよ!。
St: それでは、師匠はどんな話をするんですか?。まくらはどのように演じられるんですか?。
Sh: 枕は物語に対して客を心構えさせるための会話だよ。で、お前の噺は何だ?。
St: 高津の富です。
Sh: そして、その噺は何についての話だ?。
St: ご存じ無いんですか、師匠?。
Sh: 無論、知っているよ!。私はお前の師匠だろう!。
St: ごめんなさい。うーん…。それはお金持ちの振りをする貧乏人についての話です。宿屋の亭主がそいつを担いで高津神社で富札を買わせる。
Sh: そして、何が起こる?。
St: その貧乏人は宿屋の亭主に、もし当たったら金を半分やる約束をします。
Sh: そのとき、何が起こる?。
St: 貧乏人は籤に当たります。その宿屋の亭主は金をもらうために貧乏人の部屋に、下駄を履いたまんまで入り込みます。その貧乏人は亭主に、部屋に下駄を履いたまま入るんじゃ無いよと指摘します。
Sh: そうして、最後のオチは?。
St: その貧乏人は彼の寝床に、雪駄を履いたままで寝ていました。
Sh: よし。そう、その噺は富籤についての話だ。
St: ええ。
Sh: なら、宝くじについての話をするんだよ!。
St: 私にお手本を見せていただくことはできますか、師匠?。
Sh: (こほん)市井の人々が金持ちになる唯一の方法が、宝くじに当たることでございます。皆さんこうは思いませんか?。その当たったお金全部を遣って酒を飲むことを想像すると心が躍ります。そして、皆さんこれはご存じですか?。もし宝くじを買わなかったら、宝くじには当たらないんですよ。
St: えっなんですか?!。師匠!、師匠はやっぱり話を知らなかったんじゃないですか!。
Sh: お前は馬鹿だね!。無論、私は知っているよ。これが、枕!。
St: ああ…。