Daughter: もう15分以上、わたしたち待っているよ…。
Mother: 職員さんたちはコロナはお年寄りには危険だから、今は注意深くなっているのよ、ユリ。私は少し心配。あなたのおじいちゃん、毎月のビデオチャットで先月、私のこと思い出せなかったのよ。
D: おじいちゃん、記憶を失いつつあるの?。
M: かも。私はコロナが蔓延している間、おじいちゃんに会う事が出来なかった。今ではそれは2年になるわ。おじいちゃんの為に、私が出来る事が何かあったかもしれない。
D: お母さん。お母さんが出来ることはぜんぶしていたよ。わたしたち、やっと今日おじいちゃんに会う事ができるよ。わたしおじいちゃんも嬉しいと、きっと思ってるって思う。
M: ありがとう、ユリ。
D: で、おじいちゃんは東京に引っ越してくるの?。
M: 私、お父さんともその事について話をしてたの。それで、私はおじいちゃんに、私たちのそば、東京に来てもらいたいなと考えてる。私たち、もうおじいちゃんの為の物件も見つけてあるの。
D: そっか。わたし、すこし寂しいな…。
M: どうして?。
D: わたし、ここの電車での眺め、好きなの。それはとても可愛らしくって、独特で。もしおじいちゃんが東京にきたのなら、そのときはわたしもう、おかあさんの故郷には来ることはないだろうなあ。
M: かも…。
Staff: フナコシさん、では面会室にお入りください。
D: ああ、わたしたちだ!。
S: サニタイザーをご利用ください。それと、私たちは感染機会を防ぐ為に透明なプラスチックの壁を使用します。
D: それはつまり私、おじいちゃんの手を握ることは出来ないという事でしょうか?。
M: そう言うもの、というだけのことよ。
S: 後ほどまた私、参りますので、フナコシさん。
D: あーっ、おじいちゃんだ!。おじいちゃん!。わたし、また会えてとっても嬉しいよ!。
Grandfather: ああ、おまえは…。
D: おじいちゃん、わたしだよ。
G: こんにちは。私はお前に会えて嬉しいよ。でもお前、いまは学校にいるべき時刻だろう。
D: 学校?。わたし、いまは弁護士なんだよ、おじいちゃん!。
G: ああ、そうだった。ナガコよ。
D: おじいちゃん!。わたしはユリ。ナガコはおじいちゃんの娘!。おかあさん、なにかいってよ!。
M: こんにちは、父さん。しばらくだね。私よ、ナガコ。
G: あー、お前はナガコだ。
M: ごめんね、私たちもっと早くに父さんに会いに来ることができなくて…。
D: おかあさん、泣かないで。ああ、おじいちゃん、私たちいいニュースがあるの!。おかあさん、おじいちゃんに話してあげて。
M: うん…。私、父さんに私たちのそば、東京に暮らしてほしいんです。
G: お前は私の事を心配することはないよ。
M: 父さん?。
G: 俺は自分の故郷が好きだ、だから俺は友人たちと一緒にここで暮らすよ。
D: おじいちゃん…。おじいちゃんはここがおじいちゃんの暮らした街だってことがわかるの?。忘れていない?。
G: からかっているのかい、ユリ?。勿論、分かっているよ。
D: でもおじいちゃん、わたしのことナガコって。
G: ははん。お前が歳をとった際には、お前も物忘れするさ。俺はそれは気に食わないが、そう言うものなんだよ。
M: でもそう言う訳で、私、お父さんの面倒見てあげられるように、来てほしいの。
G: 言っただろう。俺はここで元気に暮らしているんだよ。さて、俺に俺の孫娘の顔をもっと見せておくれよ。お前随分綺麗な女性になったなあ、ナガコ。
D: おじいちゃん、私の名前は、ユリ!。
G: ははは。冗談だよ。次にお互い会える時は、このプラスチックの壁が私たちの間に無いといいんだがなあ。
M: 私もそう期待しているわ、お父さん。