Mother: ヤマト?。あなたどこにいるの?。ヤマト!。あーっ。信じられないわ、彼はもう迷子だわ。私たち、少し前に動物園に着いたばかりなのに。まって…彼は電車で動物図鑑を見ていたわ。どのページを見ていたかな?。ああ、わたし、思い出した!。
* * *
Mother: ヤマト!。そこにいたのね!。わたし、あなたにわたしの近くにいるように言ったよ。そのことについて、話したでしょう。
Yamato: しいいい!。
Mother: ああ、ごめんなさい。わたし、鳥を怖がらせるつもりはなかったのよ。で、どうして一人でここに来たのよ?。どうしてしないのあなたは…。
Yamato: おかあさん、鳥じゃないよ。ハシビロコウだよ。そして、ハシビロコウは簡単には怖がらない。だから、声を小さくする必要はないよ。
Mother: それならどうしてあなた「しいい!」って言うのよ?。
Yamato: おかあさんの大きな声が僕の耳を痛くするんだよ。
Mother: ヤマトめ!。わたしがどれだけ不安だったか、それにあなたを探すのにどれだけ歩いたか、あなたわかる?。
Yamato: 僕はハシビロコウになりたい。
Mother: へっ?。
Yamato: 僕はハシビロコウのような人間になるつもりだよ。僕は彼を 20 分間みているけれど、彼は少しも動かない。彼は彫像のようなんだよ。
Mother: うむむ…。
Yamato: 彼は数回、彼の目を閉じたけれどね。おかあさん、鳥類は彼らの眼を守るために特別な瞼を持っていることを知ってる?。その特別な彼らの瞼をハシビロコウは目頭側から閉じる。そして、他の瞼を下から上にむかって閉じる。
Mother: わたしはそれは知らなかったな。わあ。さて、他の動物を見に行こうよ?。ライオン、象もいるよ。わたし、キリンみるの楽しみにしてたの。
Yamato: おかあさん、ハシビロコウはペリカンの仲間だっていうのは知ってる?。
Mother: あなた動くつもり、ないの?。
Yamato: ハシビロコウの種は世界に一つしかないんだよ。どれだけかっこういいの?。アイビス、トキ科には 35 の種が在り、ヘロン、サギ科には 64 の種があるんだよ。
Mother: ふむむ。
Yamato: これを考えて見て。りんご、オレンジ、ぶどう、は沢山の種類がある、でしょう?。でもね、ハシビロコウはハシビロコウだけしか存在しないんだ。
Mother: それはすごいことだね!。さて、ゴリラをみにいこうか!。
Yamato: おかあさん、ハシビロコウは主に中央アフリカの湿地帯や草原に生息していることは知ってた?。
Mother: ううん、わたし、知らなかったわよ。
Yamato: それでね、乱獲のしすぎや環境破壊によってハシビロコウは少なく、少なくなっているんだ。
(うるさい音)
Yamato: おかあさん、ハシビロコウが発した音、聞いた?。
Mother: ああ、うん。聞いたよ。どこからあの音は聞こえてくるの?。
Yamoto: あれはクラッタリングって呼ばれているんだ。ハシビロコウはあの音を出すために彼らの嘴を素早く開いたり閉じたりするんだ。クラッタリングは愛を示すために、あるいは何者かが彼らの縄張りに入った時に行うものなんだ。ああ、飼育員さんが檻の中に来たよ。餌の時間に違いないよ。みて、おかあさん!。ハシビロコウが歩き出した!。彼はとてもゆっくりと、でもまるで王様のように歩くよ。僕はハシビロコウが大好き。
Mother: わたし解って来たわよ。
Yamato: 彼の目と彼の躰をみてよ。彼は自信に満ちてイケメンだ。彼は僕のお手本なんだ。僕は彼のようで在りたい。
Mother: あなた、ハシビロコウのことを「彼」って呼び続けているわね。説明パネル、あなた読んだ?。
Yamato: ううん、僕には必要ないよ。僕は彼について多くのことを知っているから。
Mother: でも、説明パネルにはこうあるよ。それは「彼女」って。