
その淑女はすぐに目を覚まし、私の口の布を取り去った。私は彼女に私の手首の拘束をそのままにするよう依頼した。警察は拘束具を捜査するだろうと私は考えたのだ。彼女は言った。
「私、アルセーヌ・ルパンがこの列車に乗って居ると貴殿に言ったでしょう。今では私の宝石を彼が持って居るわよ。」
「心配しないでください、警察が彼を逮捕するでしょう。」
「ルパンを逮捕ですって?、絶対に無理よ。」
「しかし、それは貴女次第です。よく聞いてください。駅へ列車が到着した際、警察を呼んでください。そうして彼らに、あの旅行者が私を襲って逃げたと。忘れないでください、ルパンはソフト帽を被りグレーのオーバーコートを身につけて居たことを。」
「そのコートは、貴殿の所有品では。」
「いえ全く違います。私はそのコートを所持しては居ませんでした。ああ、それと貴女は貴女の夫の職業についても警察に話さないと。彼らは貴女の話を真剣に聞くでしょう。」
「わかりました。他にはございますか?。」
「彼らには私は、貴女の夫の友人だと話してください。そうすれば、警察はルパンを直ちに追跡し始めるでしょう。私の名はギョーム・ベルラ、です。」
彼女は列車が停車する前に救いを求めた。彼女の証言は重要な参考となるだろう。警察署長が彼女に尋ねた。
「それで、ルパンは今どこに?。」
「彼はトンネル内で列車を飛び降りました。」
「その彼は本当にルパンだと?。」
「そうです!。彼はソフト帽を身に着けて居ました。」
「いや、パリに在る駅でルパンは硬いフェルトの帽子をかぶって居たんです。彼のかぶる帽子のような。」そうして私を指差した。
「いいえ、私は確信します。ルパンはソフト帽を被り、グレーのオーバーコートを着て居ました。」
「そうですか、オーバーコートは我々の調査と一致します。」
私は再び自由に息をすることができるようになった。彼女は私が望んだように完璧に行動した。さて今、私は逃走する必要がある。しかし泥棒についてはどうしようか?。彼は私のものを奪ったのだ!。見知らぬ街で彼を追跡するのは難しいゲームだった。しかし、私はそれを行わなければならなかった。私は警察署長に話しかけた。
「みなさんの調査を私に手伝わせてもらえませんか。私は自動車を所有しており…。」
「ご協力感謝します。しかし二人の刑事がトンネルの入り口へ今自転車で向かっています。」
私はこのように言わずには、居られなかった。
「みなさんはそこでは何も得られないでしょう。」
「そうなのですか?。」
「ルパンは今ダルネタル駅周辺にいます。10 時 50 分、それは今から 22 分後ですが、彼はアミアン行きの列車に乗るつもりです。」
「どうして貴殿はそれがわかるのです?。」
「単純なことです。彼は列車から飛び降りる前に私の時刻表を見ていました。なぜか?。なぜなら彼は別の鉄道路線を探していたからです。」
「素晴らしい推理です。」
私はその時、私の賢明さを示してしまったことを後悔した。警察署長は私を驚きの目で見つめた、そして少しばかり疑念を持ったかもしれなかった。幸運なことに、警察に頒布されたアルセーヌ・ルパンの写真は私のようには全く見えなかった。しかし彼らは考えが混乱し、何か違和感があることを感じていた。
「ああ、自分でも驚いていますよ!。財布を盗まれたことが、私を賢くさせました!。それでもし、あなたが私にルパンを、2名ほどのあなたたち刑事と一緒に探しに行かせてくれたなら…」
その時、あの淑女が完璧なタイミングで話してきた。
「ああ、ベルラさんの話を聞いてあげてください。」
その淑女は今や私の素晴らしい友人だった。彼女の言葉は警察署長にこう言わせた。
「ベルラ氏の援助ができるならよかったです。ルパンの逮捕をも、期待しています。」