
年に2、あるいは3回。特別な会に於いてのみ、ドルー・スービーズ伯爵夫人は「女王の首飾り」を身につけていた。それは有名な首飾りで、その家が 100 年ほど所有していたものだ。その首飾りは通常、銀行に預けられており伯爵のみが、それをそこから出すことのできる唯一の人物であった。
ある日の夕刻晩餐会があり、それは盛況だった。ダイアモンドが設えられたその首飾りは暖炉の焔のよう、伯爵夫人の首元で燦き輝いていた。
その会の後、彼女はその首飾りを外し、丁寧にそれを彼女の夫伯爵へ手渡した。伯爵は首飾りを赤い、その革製の宝石箱へ納め、箱を彼らの部屋の中に隠したのち、眠りについた。
次の朝、彼らの驚いたことに、首飾りは消失していた。伯爵夫人は警察署長をよび、彼は直ちに参じた。
「伯爵が就寝したのち、誰も伯爵の室内へは誰も入っておりませんか?。」
伯爵が答えた。
「絶対に入っておりません。我々の部屋は内部からのみ解鍵できる鍵が設置されています。」
「その部屋に入る他の通路はございませんか?。」
「ありません。」
「窓はありませんか?。」
「一つあります。しかし、それは鍵が閉まっているのです。また、その窓の前には大きな書棚がありますから。」
「なるほど。ただ、その書棚はその窓を半分覆うだけのものですな。ふむ。窓を覗くと、何が見えますか?。」
「小さな中庭ですよ、署長。」
「我々は二階にいるんですかね?。伯爵夫人が女王の首飾りを身につけるだろうことを、使用人たちは知っておりましたか?。」
「ええ、皆が知っておりました。しかし、私たちがどこに首飾りをしまうのかを知っている者は…。待ってください。」
「はい?。あなたが思い出されたことはなんでも、大変参考になることがありますから。」
「アンリエットなら知っていた。」
「アンリエットとはどなたでしょう?。」
「彼女は女学校からの友人です。彼女の夫が亡くなり、私は彼女の息子さんと一緒にすめる部屋を、彼女に貸してあげていたのです。その代わりに、彼女は私のために家事をしてくれています。」
「彼女の部屋はどちらですか?。」
「我々と同じ階です。彼女の部屋の窓は、我々の部屋と小さな中庭をはさんだ窓です。」
署長は直ちにアンリエットに聴取しに向かった。彼女と彼女の若い息子がとても小さな、暖炉のない部屋にいるのを署長は見た。署長は特に訝しい点は見つけられなかった。アンリエットはここに暮らすこの3年間の間に4度しか外出していなかった。そしてアンリエットの部屋と件の部屋と窓の距離は3メートルあった。
4ヶ月の捜査ののち、その事件は打ち切られた。その有名な首飾りを誰が盗んだのかを把握できた人間は存在しなかった。伯爵夫人はアンリエットに以前よりつらくあたり、とうとうアンリエットと彼女の息子をその家から追い出してしまった。
数ヶ月後、伯爵夫人はアンリエットからの手紙を受け取った。
ーー
私は貴女様に有り難うと、どのくらい言えばいいのかわかりません。あれを私に送ってくれたのは貴女、ですよね?。貴女のしてくれたご親切に対し、私の心よりの感謝をお受け取りください。
アンリエット
ーー
伯爵夫人はその手紙が何を意味しているのか、判らなかった。それで彼女は手紙を書き返し送り、アンリエットが 2,000 フランをパリ発の手紙から受け取ったのだということを知った。
アンリエットは彼女が亡くなるまでの 6 年間、紙幣を受け取り続けた。そしてその謎は、謎のままであった。