Mother: もしもし。
Daughter: こんにちは、お母さん。私よ、トモミよ。
M: トモミ!、変わりない?。
D: うん、元気よ。でも…明日病院に行こうと思っているの。
M: うん、うん。私はとても楽しみ!。
D: うん、私も。
M: 必要なものは荷造りした?。上着を忘れないようにね、大丈夫?。
D: したわ。忘れてない。
M: 妊娠中は身体を温めて置かないと。
D: うん、わかってる。お母さん何回も私に言うから。
M: 靴下も荷物に入れた?。
D: うん、お母さん。
M: 足首を覆う様な、長くて細めの靴下を持っていくのよ。ああ、タオルもたくさん用意してね。
D: もう用意したよ、お母さん。
M: 夫のカズキさんはどうしてる?。一緒に病院に行くんでしょう?。
D: うん、彼は休暇をとったよ。明日私と一緒に病院に行くつもりだよ。
M: 赤ちゃんが生まれたらすぐに私を呼んでね。いい?。
D: もちろんよ、お母さん。
M: ワクワクしてきた。でも、お父さんは私よりももっと楽しみにしているわ。お父さんはみんなに、僕はおじいちゃんになるんだ、と話しているわ。
D: あは…。
M: トモミ、大丈夫?。すこしだけ落ち込んでいるように見えるけれど。
D: ううん…ただちょっと…。
M: どうしたの?。
D: お母さん、実際に母親になる際にはどんな気持ちだった?。
M: どう言う意味?。
D: わたし…私少しこわいの、母さん。未だ自分が母親になるとは信じられない。私は子供っぽくて、世の中知らないことだらけ、失敗も多いし。それに…
M: もう、それほど多く失敗しないじゃない。
D: うん。でもこのあいだ、塩と砂糖を間違えてしまって夕食が酷い味になってしまった。そうしてカズキさんとすごいけんかになって、私は泣いて叫んで…
M: そう。それならあなたはどうしたいの、トモミ?。あなたの赤ちゃんに、私の準備がまだだからそこにまだ居てね、と頼むつもり?。
D: ちがう。
M: そして私に電話をかけてきたのは、あなたの代わりになって欲しいから?。
D: はっ?、それは無理じゃない!。
M: そうなのよ。あなたにしか出来ないことなのよ。あなたは完璧ではないかもしれないけれど、でも大丈夫なのよ。赤ちゃんがあなたの中に居る、だから既にあなたは母親なのよ。
D: そうなのかな。
M: あなたの赤ちゃんのために強い人間にならないとね、トモミ。もしあなたが怖がっていたら、赤ちゃんも出てくるのを恐れてしまうわよ!。そしたら、孫が見れないじゃない。
D: ああ、お母さん…。
M: うん、トモミお母さん?。
D: 私のこと助けてね。赤ちゃんにどうやってご飯をあげるのか、どうやってお風呂にいれてあげるのか…教えてね。
M: それはずいぶん昔のことだから…覚えているわからないなあ。
D: 洋服の選び方だとか、おしえて。
M: 赤ちゃんが着る洋服なんて、なんだっていいのよ。
D: それに、幼稚園のことだとか小学校だとか…いろんな全部、教えてね?。
M: それはしばらくの間は考えないでいいことでしょう。
D: 母さん…。
M: うん、どうしたの、トモミ?。
D: 私のお母さんで居てくれてありがとう。
M: うんうん。
D: 面と向かって言えるかわからなかった。だからそう言うわけで電話したの。ありがとうと言いたかったの。
M: トモミ、それは私の言いたかったことよ。私の子供で居てくれて、ありがとう。