そのたくさんの樽が火薬で満たされているのを見てペルシア人と私は知った。オペラ座の怪人は本気なのだと。彼はクリスティーヌと結ばれなければオペラ座を破壊するつもりだった。我々二人できる限り火薬から離れるために、鏡の部屋へ駆け戻った。その時、我々は隣の部屋の声を聞いた。
「さて、クリスティーヌ。ここに二つの箱が在る。一つには鋼鉄製の飛蝗が、そして他のもう一つには蠍が乗っている。これらはスイッチだ。もし君が私と結婚してくれるつもりならば、蠍を選べ。そして拒むのであれば、飛蝗だ。」
「貴方は私が結婚を選べば、オペラ座を爆破しないと約束してくれますか、エリック?。」
「無論だ。もし君が蠍のスイッチを押せば火薬は水に満たされる。君の決定までに、あともう2分ある。」
その時、彼女は言った。
「エリック、私は蠍を選びます!。私は貴方と結婚をします!。」
私は彼女が肯定したとしても、エリックはすべてを吹き飛ばすつもりだろうと考えていた。
時はゆっくりと過ぎた。我々は樽が爆発するのを待った。その時、我々は水の音を聞いた。樽が満たされるまで、水が力強く流れ始めた。そして今や、我々の居る鏡の部屋まで水はたどり着いていた!。
ペルシア人が叫んだ。
「エリック!。水を止めろ!。もう、十分だ!。我々はここで溺れてしまう!。」
しかし水は止まらなかった。水は鏡の部屋まで流れ入り、部屋を巨大な渦に変えた。我々は部屋の中でぐるぐるとかき混ぜ押された。私は沈み始めた。私が覚えている最後のことはこう叫んだことだ。
「エリック!。クリスティーヌ!。」
私が目を覚ました時、私は鏡の部屋の外にいた。そしてペルシア人は近くで眠っていた。エリックは、我々を逃してやると言った。私は後日まで何が起きたかを知ることはなかった。
「ああ、クリスティーヌ。君が君の額に口づけをさせてくれる。この気持ちは本当の口づけに感じるそれだ。私の母でさえ、私にキスをさせなかった。君はなぜ泣いている?。」
「ああ、かわいそうな、不幸なエリック。」
「クリスティーヌ、君が私の手を握っている!。そしていま君が私の傍らで泣いている。今日は私の人生で最高に幸せな日だ。ほら、この金の指輪は君への私からの結婚への贈り物だ。」
「どういう意味ですか?。」
「私は君がその、若い男を愛しているのは分かっている。君はラウルと結婚してここを去るのだ。私は君を愛しすぎ、じきに死ぬだろう。しかし、ひとつだけ約束をしておくれ。私が死ぬまでの間、この金の指輪を身に着けておくれ。私が死んだ時、ここに戻り、私と一緒にそれを埋めてくれ。」
クリスティーヌは約束をした。彼女は泣くのをやめ、エリック、オペラ座の怪人、は一人、泣いた。
それから三週間ほどして、新聞に記事が載った。
「エリック死亡」
と。