エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

2019年05月10日、11月08日放送 「Sangetsuki Episode One」

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 隴西出身の李徴は知恵があり、才能に恵まれていた。若い頃彼は科挙と呼ばれる極めて難しい試験に合格し、役人に成った。彼は江南と呼ばれる地域に陸軍及び、罪人を管理する機関の長として配属された。しかし李徴はその業務を誇りに思う事が出来なかった。その業務は彼に充分だとは彼は、思わなかった。

 程無くして、李徴は職を辞し、彼の故郷へ戻った。その土地で彼はほぼ誰とも会わず詩を書くことを試みた。人々の記憶に100年の間も残るような詩を。李徴は有名な詩人としての彼を歴史に残したかった。彼は低級な官僚として、能力のない上司の言うことを聞いて過ごすよりもそうした方が良いと考えた。

 しかしながら、高名な詩人として名を成すことは簡単なことではない。日が経つにつれ李徴は貧しく、貧しく成っていった。彼は痩せ、彼の頬骨は突き出し、目は危ない光を放っていた。彼は若い頃の容貌は整っていたが、今ではもはや同じ人物には見えなかった。

 李徴はこのような貧しい生活が続けられなくなり数年の後、彼の家族と良い暮らしを求めて再び東の都市に戻った。彼は自分が高名な詩家になれると自分を信じる事が出来なかったからである。かつて彼と共に働いていた同僚達は高級官僚として仕えていた。あなたは、自分が尊敬できない人々のもとで働く李徴の心の痛みを想像することはできるだろうか。彼は塞ぎ込み、彼を楽しい気持ちにさせるものは何もなくなった。

 一年が過ぎ、李徴はついに発狂した。彼は深夜に突然目を覚ますと闇夜の中に叫びながら駆け抜けていった。彼は二度と戻らなかった。

 

 その次の年、袁傪と言う名の男が従者とともに王の命令の元、道を旅していた。或る夜、一行は進みを止め休憩し、そして次の朝早くに目を覚ました。まだ辺りは暗い。この地方の役人が言う。

 

「この旅路には人喰い虎が出ます、日中に進むべきです。もし、待てるのであればそうした方がよろしいかと。」

 

 しかし、袁傪は言う。

 

「問題ない。多く従者も居る。」

 

 そうして、一行は進んだ。

 袁傪の一行は弱い月明かりの下、旅を進めていたその時突然、虎が高い草を超えて飛び出してきた。虎は袁傪に殆ど飛びかかる寸前、また草の中に駆け戻った。人の声がこう言った。

 

「ふう、寸前だった。」

 

 声はなんども繰り返していた。袁傪はその声を過去に聞いた事が在った。驚いてこう呼びかけた。

 

「君か?私の友人の、李徴か?。」

 

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