エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「A Bunch of Grapes Episode Three」(2020 年 7 月 17 日 放送分)

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 教師は我々を見た際、すこし驚いたように見えた。しかし彼女は右手で彼女の短い髪に触れ、彼女のいつもの柔らかな表情で我々を見た。彼女は何か在ったの、と訊くように彼女の首を傾げるのであった。

 その時、大きく利発な少年が前に歩み寄った。彼は彼女に、私がジムの絵具をどのように掠めたのかについて全てを話した。彼女の顔はしばらくの間曇り、我々を真面目な表情で見つめた。彼女が私を見た際には、私は殆ど泣きそうなところであった。彼女は私に尋ねた。

 

「それは本当ですか?。」

 

 それは本当だった。しかし私の好きな教師に、やってはいけないわたしのした事を知られたくは無かった。それで返答する代わりに私は、泣き出してしまった。

 

 教師は暫く私の事を見つめていた。そうして、彼女は私の級友達に、静かな声で言った。

 

「皆さん、もう行ってもいいですよ。」

 

 級友達はつまらなそうに、そして騒がしく階段を降りていった。

 彼らが去った後、教師は何も言わず、私のことを見ようともしなかった。彼女は自身の指先を見つめるのみであった。しかしそうして、彼女は静かに私の側へ来て、私を抱きすくめた。彼女は静かな声で私に訊く。

 

「絵具は返しましたか?。」

 

 私はそれをしたことを彼女に知ってもらいたく、深く頷いた。そうして教師は言った。

 

「此の事は誇れることではない事。貴方はご存知ですよね、違いますか?。」

 

 それを聞いた時私は、とても辛かった。私は震える唇を止めるためにそれを噛んだ。私は教師の腕の中に死んでしまいたい、というように思っていた。

 

「もう泣くのをおやめなさい。私には解りました。貴方は次の授業には出席しなくても良いですよ。この部屋に居らっしゃい。私が戻るまでの間、ここに居らっしゃい。よろしい?。」

 

 彼は私を長椅子に座らせた。そうして窓から手を伸ばし葡萄の木より、一房の葡萄を掴んだ。彼女は私の膝の上にその葡萄を置き、静かに部屋を去った。私は未だ、泣き続けていた。

 

 私は好きである教師を悲しませてしまった。そのことは私をさらに沈鬱にさせた。私は葡萄を食べる気には成れなかった。私は泣いて、泣き続けた。

 誰かが私の肩を軽く揺すった時、私は目を覚ました。私は教師の部屋で眠りに落ちていたのだ。彼女は私を微笑みで見降ろした。私は自身の少しの微笑みで笑い返し、慌てて葡萄の房を摘み上げた。それらは私の膝から落ちる寸前であったから。そうして、私は自分のしたことを思い出した。私の笑顔は、すぐに無くなってしまった。

 

「そんなに悲しい顔をしなくて良いのです。皆は家に帰りました。貴方もお帰りなさい。そうして貴方は何があったとしても明日、学校に来なくてはなりません。明日もし貴方のお顔を見ることが出来なかったなら、私はとても悲しい。登校することを、約束してください。よろしい?。」

 

 そう言うと、彼女は葡萄を私の鞄へ入れた。

 

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