エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「A Bunch of Grapes Episode Two」(2020 年 7 月 10 日 放送分)

f:id:forenglish:20200531111637j:plain

 

 予鈴が鳴った。私はその時突然に立ち上がった。窓越しに、級友たちが笑いながら彼らの手を洗いに行くのが見えた。私の頭の中は氷のように冷たくなっていった。私はジムの机の方へ歩いて行き、その蓋を開けた。夢の中にいるようであった。私は近くに誰もいないかどうかを確認するために中を見廻した。そうして、その木製の箱を開け、素早く青と赤の絵具を取り、自分のポケットの中にそれらを入れた。

 私の級友たちが教室に帰ってきた。私はジムの顔を見たくてたまらなかったのだが、自分にそうさせることが出来なかった。授業が始まった。普段は私は、私の若い教師の話を聞くのが好きだったが、その日には彼女が言っていることが何も理解できなかった。教師は何かしら違和感を感じているように私を見ているように、私は感じた。

 

 授業の終わりに再び、鈴が鳴った。私は授業が終わり、ほっとした。しかし教師が去ると、私の学級のうち、一番身体の大きな、一番利発な少年が私に近づき、私の肘を掴んだ。彼は私に僕と一緒に来い、と言う。私の心臓が早く打ち始めた。それは宿題を忘れたときに、教師に名前を呼ばれる時の心持ちと同じようであった。私は校庭の隅に連れて行かれた。

 

「僕は君がジムの絵具を持っているのを知っているんだ。それらを渡してくれないか。」

 

 私は彼の言うことを聞いた時、心が落ち着き始めた。そうして嘘をついた。

 

「僕はそんなものは何も、持っていない。」

 

 そうして、ジムが話した。彼の声は震えていた。

 

「僕は僕の木箱を昼食前に見ていたんだ。全てがそこに在ったよ。でも昼休後に僕の絵具のうち二つが無くなっていた。君は教室にいた唯一の人物だよ。」

 

 私はそれが、自分の終わりだと理解した。血が頭に押し寄せ、顔は燃えているよう感じた。その時、誰かが私のポケットに手を伸ばそうとした。私はそれを止めたかったが、彼らは多勢であった。私のポケットに、彼らはビー玉、面子、そうしてジムの絵具を見つけた。皆は怒った眼をして言った。

 

「そら、言ったろう。」

 

 私の身体は震え始め、私の周りの世界が全て真っ暗になるように思えた。その他の生徒たちは休み時間を楽しんでいるのに、私は自分の内側から死んでいくような感覚を得ていた。私はどうして、こんなことをしてしまったのだろうと思っていた。私は弱かった、私は泣き始めた。

 

「泣いて僕らを驚かせることはできないよ、わかるだろう。」

 

 大きく、賢い少年が強く私に言った。彼が私を好きではないと言うことは明白であった。私の級友達は私のことを、二階にひっぱりあげた。私の好きな教師の部屋は、そこに在った。

 ジムがその扉をノックした。私は教師が優しい声で

 

「入りなさい。」

 

と言うのを聞いた。私は中へは入りたくは無かった。そのように感じたのは、その時が最初で最後だったかもしれない。

 

プライバシーポリシー お問い合わせ