エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「Red Candles and the Mermaid Episode One」(2020 年 8 月 放送分)

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 人魚は南方の海に暮らすだけではない。彼らはまた、北方の海にも暮らす。北方の海は、たいへんに青い。

 或る日、人魚は岩の天辺に休んでいた。

 

「ここはなんて寂しい場所。どうして私たちは寒く、暗く深い海に暮らさなくてはならないの?。人間は私たちに姿が似ているけれど、彼らは暗い場所に住まない。それはどうして?。」

 

 この人魚は誰とも話さず何年も暮らしていた。そして彼女は、妊婦であった。

 

「私は自分の子供には私のよう、悲しく寂しい気持ちを感じさせたくはないの。私は人間は、親切な生き物だと聞いた。一度彼らが受け入れてくれたなら、いつも彼らは守ってくれるとも聞いている。私の子供は、人間の世界の一部に成る事ができるかもしれない。」

 

 そう思い、人魚は彼女の子供を地上に産み落とすことを決めた。海のほど近くの小さな山に、遠くから神社の灯りを見る事ができた。

 

 海岸のそばに、多くの様々な商店を持つ小さな町があった。そのうちのひとつは、老夫婦が営む蝋燭屋であった。老夫は蝋燭を作り、老妻はそれらを売っていた。

 この町の人々や近隣に暮らす漁師がその町の神社にお参りに行く際、皆はこの老夫婦の店で蝋燭をいつも買うのであった。

 

「この山にもし神社がなければ、我々は蝋燭を売ることはできないでしょうね。」

「私も、心の底から神様にお礼をするよ。」

 

 ある夜、いつものよう神社で祈った後、老妻は山を歩き降りていた。月が美しく輝いていた。その時突然に、彼女は石階段の元に泣いている赤ん坊を見つけた。

 

「ああ、可哀想な赤ん坊。誰がお前をここへ捨てたのだろう?。もし私がお前を置いていったなら、神様は私に罰を与えるね。」

 

 そう言って、老妻は赤ん坊を拾い上げ家へと連れ帰った。家へ帰った際に彼女は老夫に全てのことを話した。老夫は言った。

 

「赤ん坊は神様からの授かりものに違いない。」

 

 そうして、老夫婦は赤ん坊を育てることにした。赤ん坊は女の子であった。そして赤ん坊の下半身は人間の形ではなく、魚のものであった。老夫婦はこの赤ん坊は人魚のものに違いないとわかった。彼らはこの生き物のことは聞いた事があった。

 

「この子は人間ではないが…。」

「そうですね、しかしこの子は無上に愛らしい顔をしていますね。」

「神様は私たちが子供を欲しかったことを分かっていたんだ。だから、この子を大事に育てよう。わたしはこの子は利発な子に育つだろうと思うんだよ。」

 

その日より、老夫婦は女の子の赤ん坊を愛情と共に育てた。彼女は歳を重ね育つにつれ穏やかで賢い、美しい黒い眼と輝く黒髪をもつ娘となった。

 

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