エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「Lemon Episode Four ~Finale~」(2020 年 12 月 放送)

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 私は丸善に入った。しかし私の心の多幸感は徐々に私から逃げ始めた。香水壜や煙管も私の心を惹きつけなかった。暗い感情が私を襲い始めた。私は歩きすぎて疲れたのだろうと思った。そして、画集で埋まった棚へ向かった。私は一つの本を取り出した。それを開きページを捲ったが情熱が出ない。更に他の本を取った。それも同様だった。しかし私は、そう試さないとならなかった。そうして、私は堪えることができなくなり、本を置いてしまった。棚に戻すことさえしなかった。私は何度もその行動を繰り返した。最後には橙色の装丁の、私のお気に入りの本でもそれを試した。その本でさえも尚一層堪えられなかった。私はどうしてこれが、好きだったのだろう?。

 その時、私は気がついた。

「ああ、そうだ。」

 私は檸檬を袂に持っていた。カラフルな本全てと一緒に、ここに檸檬を足すことを私は試してみることが出来るのかも知れない。

「やってみよう」

 私は軽い興奮が私の元に戻ってくるのを感じた。私は本を積み重ね始めた。それから、それらを急いで崩して、再び積み重ねた。不思議な本のお城は赤くなったり、或いは青くなったりした。

 とうとう、私はその作業を終えた。私は自分の踊る心臓を制しようとした。果たして、私はゆっくりと、書籍の塔の天辺に檸檬を置いた。上出来だった。

 私はそれを観た。檸檬は様々な色彩をその洗練された体内に取り入れたように観えた。空気が水晶の様に澄んだ。私は丸善の埃ぽい空気が、檸檬の周りに凍って居るように感じた。私は暫くの間、それを観て居た。

 唐突に、私は2番目のアイデアを得た。そのおかしなアイデアは私を恐れさせた。

「私は書籍の塔と檸檬を、このままに置いておこう。そして、店の外に何事も無かったかの様に出よう。」

 そのアイデアは私を擽った。

「私は店を出るべきかも知れない。よし、出よう。」

 そうして私は、直ちに店の外に歩いた。私は悪い化け物だった。私は丸善の本棚の上に光り輝く黄金の爆弾を残してきた。爆弾は10分以内に画集の中で爆発する。そう成ったのなら、どんなに楽しいだろう。私はその状況を想像することに全力を注いだ。

丸善は私には居づらい場所だった、そして今はそれは、バラバラに爆発してしまう。」

 そうしてその後私は、奇妙な映画のポスターの在る京極通を、歩き降りた。

 

終わり。

 

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