エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「Matasaburo of the Wind Episode Four ~Finale~」(2021 年 1 月 放送)

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 ヒューッ シューッ、

 あおい胡桃を吹き飛ばせ

 すっぱい果物も吹き飛ばせ

 ヒューッ シューッ、

 ヒューッ シューッ。

 

 夢の中で、一郎は三郎が彼に教えてくれた歌を聴いていた。その時、彼は突然起き上がり、家の外を見た。風は強く吹いており、森は動物の叫び声のような音を作り出していた。

 一郎は服をすぐに着て、家を出る扉を開けた。冷たい雨粒が強風と共に一郎に向かって飛びかかってくる。家の外はすでに明るくなっていた。

 家の前の胡桃の樹々が尋常ではないよう青白かった。樹々はまるで強風と豪雨により洗われたように見えた。雲は灰色で、さらに、さらに北に風に吹かれるままだった。

 一郎はじっと立ち、彼の周りの音を聴き、空を見上げていた。

 一郎は彼の胸に軽い波がたつのを感じた。しかし、彼は立ち続けて、風が速く深く鳴くのを聴いていた。彼はその時に心臓が激しく打つのを感じた。

 丘と野原の風は、その日の前には静寂であった。しかし今、タスカロラ海溝に向かい一斉に動いている。一郎はこのことを考えると、彼の顔が熱を帯びるのを感じた。それは、空の風と一緒に走っている気持ちを彼に思わせた。一郎は彼の母親に言った。

 

「又三郎は、去ってしまったんだと思うよ!。」

 

 一郎は嘉助の家に急いだ。二人は一緒に、強い雨と風の中を学校までずっと走り抜けた。

 教室は窓際に降り入る雨を除いてしんとしていた。一郎と嘉助は、先生が現れた時には箒で水を掃き出していた。先生は言った。

 

「君たち、今日は特に早いね。」

 

 一郎は答えた。

 

「おはようございます、先生。」

 

「又三郎は今日は、来ますか?。」

 

 嘉助が問う。

 

「高田さん、のことかな?。残念なことに、高田さんは昨日彼のお父様と共に引っ越ししたのです。それは日曜日だったので、彼らはさようならの挨拶ができなかったね。」

 

 嘉助は再び問う。

 

「彼らは、飛んでいったのですか?。」

 

「いいや、高田さんのお父様は彼の会社から電報を受け取った。会社はこの地での計画の中止を決定したそうだ。」

 

 嘉助は言った。

 

「違う、僕はそうは思わない。彼は風の又三郎に違いない。」

 

 他の部屋が騒がしかった。先生は手の赤い団扇と共にそれを見に行った。二人の少年は押し黙っていた。

 風は吹き続けていた。窓は雨粒により、透かして見るのを困難にされていた。そして、風が窓をもう一度、震わせた。

 

終わり。

 

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