それらすべてが遠い昔の様に見えた。嘉助は又三郎を彼の目の前に見た。又三郎は彼の足を前に投げ出し、草の上に横たわって、静かに空を見上げていた。彼はいつもの灰色の上着と、ガラスで出来たマントを身につけていた。また、彼は輝くガラスの靴も履いていた。嘉助は風が強く強く吹き始めるのを感じていた。又三郎は笑うことも話すこともしなかった。その時、突然彼は空に飛び上がった。ガラスのマントが明るく、輝いていた。
* * *
嘉助が彼の眼を開いたのは、その時であった。灰色の霧が彼のそばを素早く通り過ぎた。また、馬が彼の前に立っていた。そして、三郎が馬の後ろから歩き出てきた。彼の唇は固く閉じられていた。嘉助は全身を震わせた。その時、二人は誰かが叫ぶのを聞いた。
「ここにいるのか、嘉助?。」
それは一郎だった。嘉助は嬉しさとともに飛び上がり、答えた。
「そうだ、ここだよ!。」
一郎と彼の兄が現れた。一郎の兄は言った。
「僕らは君を探していた。」
一郎は言った。
「嘉助、又三郎、僕らは君たちを心配したぞ。大丈夫か?。」
三郎は黙って頷いた。一行は一郎の兄の先導する道を帰った。雷光が2回、空に走った。
その時、一郎の兄は大きな声で叫んだ。
「おーい、おじいさん!。彼らを見つけたよ!。」
老人は言った。
「私はとても嬉しい。こちらへ来い、寒いだろう。」
彼らは皆、おじいさんの用意した火の近くに移動した。老人は言った。
「一体、お前たちは何処に行っていたのだ?。」
一郎の兄が二人の代わりに答えた。
「二人は笹長根のそばを降りていた。」
「もしそれ以上少しでも行ったなら、お前たちの誰も戻ってこれなかったぞ。さて、団子を食べなさい。雨は直にやむだろう。」
一郎の兄が言った。
「みて、おじいさん!。空が明るい。雨が上がる。」
草の葉の雨粒がそこから落ちる際に煌めいていた。そして、全ての植物が、その年の最後の日の光を享受していた。西にある草原はまるで笑っているかの様、あかるく輝いており、栗の木は青い光を帯びていた。家へ帰る時、皆疲れていた。
三郎は、歩いている時、何も話さず、彼の唇を固く閉じたままにしていた。三郎がさった後、嘉助は言った。
「三郎は風の神だ。彼は風の神の子供だ。彼と彼の父親は、あの家に居座っているんだ。」
一郎は笑って言った。
「そんなはずがないよ。」