Assistant Director(AD): 足をお運びくださり、有難うございます。我々は数日以内に、結果をお知らせいたします。ナオヤさん、彼女の事をどのように思われましたか?。
Naoya: 彼女は主役のイメージにはマッチしない。
AD: わかりました。次の方をお呼びします。
Narration(Naoya): 私は25年間、映画監督として働いている。今日は、私の次回作の主役の為のオーディションを開いている。正直に言えば、びったりとした役者を見つけるのは難しい。なぜなら、このキャラクターは私の初恋、ヨシコさんのようなものだからだ。ああ、ヨシコさん。僕は君の快活な声を、いつでも想い出せる。
Machiko: はじめましてっ!。私は、ナカムラマチコといいます!。私は、18歳です!。
AD: わっ!。そんなに大きな声で話さなくてもいいよ。聞こえます。
N: いいんだよ。それで、君はどちらがご出身だろうか?。
M: 札幌から来ましたっ。
N: ほんとうかい?。僕も、札幌出身なんだよ。
M: 知ってます。私の母親が私に、監督は高校の同級生だと言って居ました。
N: 君のお母様が?。彼女は誰なんだい?。
M: 私はシライシヨシコの、娘なんですっ。
N: ヨシコさんの、お嬢さん?。
AD: ナオヤさん!。大丈夫ですか?。
N: うーん…。うん、それで、ああ、君のお母様は元気かい?。
AD: (小さな声で)ナオヤさん、個人的な質問はしない方がいいです!。
N: (小さな声で)しかし、知りたい事なんだよ!。
M: 私の母親は元気です。彼女はいつもみんなに、監督の知り合いだって、言って居ます。
N(N): ヨシコさんが、僕のことを?。
AD: マチコさん。君のお母様はナオヤさんのお知り合いかもしれない。しかしだからと言ってそれは、君がこの役を獲れることを意味はしない。ですよね、ナオヤさん?。
N: 勿論そうだ。よし、わかった。台本の8ページを開いてみてください。この台詞はヨシコの…うむ、違う、ヨシエの台詞だ。僕に聞かせてくれるかな?。
M: わかりましたっ。
N: はい、スタート!。
M: ”ナオキ!まって!。どうして私と話してくれないの?。なにがあったの?。”
N: カアット!。(小さな声で)彼女は良いと思う。
AD: (小さな声で)マジすか?。
N: マチコさん、僕は君に、私の作品のスターになって欲しい!。
M: ほんとですかっ?!。そのようなお言葉をいただき、わたしはとても嬉しいですっ!。
N: そして、君は何か聞きたいことが在るかな?。
M: 実は、在ります。この物語は私のお母さんについてのお話ですか?。
N(N): ああ、まいった!。彼女は気付いて居た!。
N: うむ、どうしてそう思うんだい?。
M: ええ、この物語は札幌が舞台です。そして、配役の名前、ヨシエ、は私の母の名前にとても似ています。
N: 札幌には同じような名前を持つ女性は沢山いるよ。
M: でも、この物語の男は、ナオキという名前です。そして、監督のお名前はナオヤ。これは、実話なのでしょうか?。
N: うむ、うう、僕は考えを改めたよ。君はこの映画には出演できない。
M: おお、わかりました…。有難うございました。左様なら。
N: 待って!。僕は君がそんな悲しい顔をするのを見て居られない。僕はまたさらに考え方が変わった。君が主役だよ。
AD: うーん、ナオヤさん。体調は大丈夫ですか?。
N: おおお、しかしヨシコさんが、彼女は僕の初恋の相手だったと知ったならばどうなる事だろうか…。
M: 私のお母さんが監督の初恋の相手ですか?。
N: そうだ…。
M: お父さんには内緒ですよっ、でもお母さんも、監督が初恋のお相手だったよっ、て、言ってましたよ!。