エンジョイ・シンプル・イングリッシュ 和訳

NHKのラジオ番組 enjoy simple english「エンジョイシンプルイングリッシュ」を和訳しています。

「Red Candles and the Mermaid Episode Four Finale」(2020 年 8 月 放送分)

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「どなた?。」

 

 その老夫婦は、戸を叩く者が誰かは知らなかった。叩く音は続いた。そうして老妻が戸を少し開け、表を見た。そこには女が立っていた。彼女の顔は蒼白であった。女は、蝋燭を買いに来たのである。それは真夜中であるが、老婦は金銭を稼ぐことがらについて頭を働かせた。それで、老婦は女を追い返すことはしなかった。老婦は蝋燭の箱をその女に見せた。その時、老婦はその女の長い黒髪に気が付いた。それは濡れて、月明かりに煌々と輝くのであった。

 その女はその箱から赤い蝋燭を拾い上げ、注意深くそれを見るのだった。そして彼女は赤い蝋燭を買い、帰って行った。

 老婦が家の中に戻り硬貨を見ると彼女は、それは貝殻であることを知るのだった。老婦は、自分は騙されたのだと思いその女を見つけるため表に駆け出たが、その女の跡はそこには無かった。彼女は行ってしまった。

 その夜、天候が急変した。今まで見たことも無い大きな嵐が、彼らの町を襲った。人魚の娘は既に、南方への船に乗っていた。老夫は言った。

 

「娘の船はこの嵐ではたどり着けまい。」

 

 夜は過ぎ、朝が来た。そこには沢山の壊れた船が、黒い海に浮かんでいた。

 

 その時以来、赤い蝋燭が神社に灯るときはいつでも嵐が来るのだった。それで人々は赤い蝋燭は不吉であるという話を始めるのであった。老夫婦は神様の鉢が当たったのだと考えて、彼らの蝋燭屋を閉じた。

 赤い蝋燭は最早売られては居ないのだが、不思議なことに赤い蝋燭は毎夜、神社に灯るのであった。そしてこれを見たものには災厄が訪れ、海に溺れて死ぬのだった。この噂は広がり、最早その神社に祈りに来る者は誰もいなかった。その神社は以前は町に幸運をもたらしたものだが、今では不吉以外のものを持ってこなかった。町の人々は、彼らの町にこの神社が無ければいいのだと願った。彼らの町の船に乗る水夫は、その神社のある山を見る事すらも恐れた。岩に当たる波の在る北方の海の夜はいつでも恐ろしい。すこしの月明かりのみが在る、曇った夜にはそれはさらに恐ろしくさえなる。人は、星々のない雨の夜、闇の中に、波の間に蝋燭の灯りを見た。彼らは言った。灯りは山を登って行き、その神社の方を向いていたと。

 数年のち、その町に住む者は誰もなくなり、町は失くなった。

 

終わり。

 

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