内供は日に日に不幸せになった。彼の鼻は以前は顎まで垂れ下がって居た。今はそれは短く、より普通であった。しかし内供は人々がより彼を晒うことを知った。内供は彼の弟子たちを怒鳴りつけることを始めた。
「そこにただ立って居るのではない。お前は充分に掃除をして居ない!。」
「眠る時間があるなら、経典を読め!。」
内供は近くにいる者誰にでも怒りをぶつけた。彼は彼の鼻を短くすることを助けた弟子にまでさえ、怒るのであった。それはやり過ぎであった。人々は内供についての悪い噂を話した。
「私は、内供はお釈迦様に罰をうけるだろうと思う。」
彼についての話を人々がしているだけでも、内供は怒るのであった。彼は殊更に、悪戯好きな弟子について怒りを覚えて居た。
或る日、内供は犬がとても大きな声で吠えているのを聴いた。それで彼は何が起きているのかを見るために表に出た。彼は弟子が、長い木の棒を痩せた犬に振り回しているのを見た。弟子は言った。
「お前は、お前の鼻を打たれたいのか?。鼻を打たれないようにな!。」
内供は弟子から棒を取り上げ、彼の頭を強か打った。弟子は叫んだ。
「ああっ!、ごめんなさい!。」
内供は激怒した。何故ならその木の棒は、弟子たちが彼の鼻を持ち上げるために用いられて居たからである。
その後、内供と話をする者は居なく成った。彼の全ての厄災は、彼の長い鼻が短くなった事から始まった。内供は彼の鼻のことで不幸であった。彼は彼の昔の鼻が恋しくなるとは、思っても見なかった。
そうして、寒い風のある夜、内供が就寝しているところに塔から来る風鐸の音が大きく、はっきりと届いた。人は歳を重ねた時、大きな音や寒い寝床では眠るのは困難である。内供は眠ることが出来なかった。
そのとき突然に、彼の鼻が痒み始めた。内供は彼の鼻に触れた。それは少し濡れており、すこし大きく成って居た。そしてまたそれは、熱さも感じられた。内供は思った。
「私は鼻を無理やりに短くすることをし過ぎたのかも知れない。私は病に違いない。」
彼は、壇へ仏花を備えるが如く、彼の鼻を柔らかく触った。
明くる日の朝、彼はいつものよう早朝目を覚まし、寺の庭が黄金に輝くのを見た。木葉が夜の間に落ちて居た。寺の屋根にある九輪が、朝日のなかに明るく輝いて居た。突然に、殆ど忘れかけて居た感覚が彼に戻ってきた。
「これは、何だ?。もしかすると…?。」
内供は速やかに彼の鼻に触れた。それには前日とは違う感覚を感じられた。もはやそれは、短くは無い。彼の鼻は再び、彼の顎よりずっと下に垂れて居た。内供の鼻はその、元の大きさに戻った。彼は彼の鼻が短くなった時と全く同じよう、解放された感覚を覚えた。
「誰も私のことを晒う者は居ないだろうと、私は確信する。」
内供は静かに自分自身に話した。彼の長い鼻は、秋の朝風とともに穏やかに揺れた。