
かつて、夢窓国師と呼ばれる僧侶が美濃国の山の中で迷った。その時突然丘の頂上にて、彼は僧侶のために作られた小さな小屋を見つけた。とても老いた僧侶がそこに居た。
「今晩こちらにあなたと一緒に過ごさせていただくことはできますか?。」
夢窓は尋ねたが、しかし老人は拒み、近くの村を夢窓に示した。
夢窓はその村の村長の屋敷にたどり着き、暖かく迎え入れられた。夢窓は寝床と食事を与えられた。
真夜中の少し前、人が泣く大きな声が夢窓を眠りから起こした。その時若い男が部屋に入ってきて言った。
「僧侶様、私の父が死にました。私どもの村にはある習慣がございます。人が死んだ際には夜の間、村に何ぴとも留まることはできない、と。決まって不思議なことが起こると言われております。」
夢窓は答えた。
「私は僧侶です。ですから、あなたのお父上の肉体とともに居り、彼のために祈りましょう。」
「ありがとうございます、僧侶様。もし不思議なことを見たり、聞いたりしたなら、明日の朝私どもが戻った時にそれをお話しください。」
村人たち全員が村を後にし、その僧侶はその遺体がある部屋に向かった。夢窓は経を読み葬儀を行った。
夜の静寂が最も深まった時にひとつの影が静かに部屋に入った。夢窓は動くこともできず、声を出すこともできなかった。その影は猫が鼠を食べるかのように遺体を喰らった。そしてそれが現れた時と同じように不思議に出て行った。
次の朝、村人すべてが戻ったが、その遺体が無くなったことをみても驚く者は居なかった。
夢窓は彼らに、遺体を食うその暗く恐ろしい影のことを話した。若い男が言った。
「それは、私たち全員が昔から聞いてきた古い話しと同じです。」
夢窓は尋ねた。
「丘の上の僧侶は法事を執らないのですか?。」
村人達は驚いてお互いを見合った。
「何代もこの辺りには住職はおりません。」
夢窓はあの小屋へもどった。そうして、その老僧侶は話し始めた。
「私はとても恥ずかしい、私は恥ずかしい、あなたは私の本当の姿を見た。私は昨夜死人の肉を食べた。私は人間を食べる食人鬼モンスターです。遠い昔、私はこの地の住職でした。しかし、私は衣食のために自身の仕事をしていたにすぎません。そのために死ぬとすぐに私は食人鬼として生まれ変わりました。それ以来、何者かが死ぬと私は毎回その遺体を食べないとなりません。この私の恐ろしい状況から、どうか抜け出させていただけませんか。」
これらの話を老僧侶が話すとすぐに、彼とその小屋が消滅した。夢窓は自分自身が、高い草の中にいるのを見つけた。彼は、僧侶の古代の墓のように見える、五個の石の塔のそばに跪いていた。